グリーンランドに住まう「イヌイット」の食生活。
ほぼほぼ肉食の生活なのに、なぜか糖尿病や心筋梗塞が少ないと言われているグリーンランドのイヌイット。そう、勘の良い方は気付いたかもしれませんが、一言「イヌイット」と言っても、イヌイットが住むのはグリーンランドのみではありません。
グリーンランドのイヌイットだけが、世界的に「病気が少ない」と認識されているのはなぜなのでしょう。
ここに、面白い研究結果があります。
1、グリーンランドのイヌイット
2、デンマーク本土在住のイヌイット
3、デンマークの白人
上記3者の罹患率、死亡率を比較検討した際
グリーンランドのイヌイットは、デンマークの白人に比べ心筋梗塞が極めて少ないことがわかりました。
さらに彼らは心筋梗塞の他糖尿病・気管支炎喘息・皮膚疾患・血液中の甲状腺ホルモンが増えて起きる甲状腺中毒症・自己免疫疾患などなど、さまざまな病気の罹患率が極めて低いことが分かったのです。
そして興味深いのが、同じイヌイットでもデンマーク在住のイヌイットは心筋梗塞などが多く、デンマークの白人と同様の病気パターンが多かったのです。
研究期間、グリーンランドのイヌイットがなってしまった心筋梗塞者の人数は、対象者約1800人中わずか3人。この数字って、かなり少ないのでは・・・・・・?研究者じゃなくても分かるほどの少なさです。
そして、イヌイットと同じ年齢構成を当てはめて割り出したデンマークの白人の心筋梗塞者の予想人数は、なんと40人。
この研究結果から分かったのは、単に【イヌイット民族だから健康】というわけではない。ということ。
血液中に含まれるEPAの量
更に研究を通して分かったこと。それはグリーンランドのイヌイットたちの血液中に含まれるEPAの量が、デンマークに住む人々に比べはるかに多いということでした。
このEPAこそ、グリーンランドで暮らすイヌイットの健康を保つ秘訣だったのです。
EPAには、血液中の中性脂肪とコレステロールを減少させるという働きが。
血液がドロドロになることを防ぐということは、結果として動脈硬化や高血圧症・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病の予防に大変効果的だと言われています。
更には血液がサラサラになると血栓もできづらくなり、その結果心筋梗塞や脳梗塞の予防にも効果が期待できるというわけ。
EPAって、すごい・・・・・・。
謎を解くのはグリーンランドに住むイヌイットの食生活
では、なぜグリーンランドのイヌイットだけEPAが多いのか。
遺伝的なものではないということは、その土地の生活習慣に大きな鍵があるはずと考えた研究者たち。
生活習慣のなかでも、大きな割合を占めるのが「食生活」・・・・・・と、いうことは。
研究者たちは、グリーンランドのイヌイットたちが食べる物にこそ、答えがあるということに気づいたのです!!
同じ肉でも全く違う。
グリーンランドのイヌイットも、デンマークに住むイヌイット、白人も、基本的には肉が中心の食生活。
しかし、同じ肉でも「種類」が違いました。
デンマークに住む人々が食べる肉の種類:牛肉・豚肉など
グリーンランドに住むイヌイットが食べる肉の種類:アザラシ・クジラ・セイウチなど
イヌイットが主食とする動物や魚の脂肪には、あのEPAがたくさん含まれていたのです。
EPAがたくさん含まれた脂肪を食せば、自然に自分の身体にもEPAが多くなる。
知ってか知らずか、グリーンランドに住むイヌイットの人々はEPAを多く摂取して、自分たちの健康を守っていたんですね。
このEPAは世界的に注目され、サプリメントや薬としてぞくぞくと販売されていきました。
日本でも、動脈硬化抑制や高脂血症などの保険薬や多くのサプリメントが売られていますよね。
世界が注目したグリーンランドのイヌイットの食生活には、このEPAがとても大きく関わっていました。
人間の歴史を紐解くと、大体が「理にかなった」暮らし方をしているものなんですよね。
例えば、遠い昔日本では、おにぎりを笹の葉っぱにくるんで持って歩いていました。
これも実は、笹には食べ物を腐らせない成分があるというのが実証されています。でもこれだって、当時の人々が科学的に分析された成分を知っていたとは思えません。
【どうしてそうなのかは分からないけど、○○は○○に効く。】
きっとそんな風に、沢山の知恵が生まれてきたのでしょう。
グリーンランドで暮らすイヌイットの食生活も、そんな遥か昔から受け継がれた「先人の知恵」なのかもしれませんね。
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